SさんとKちゃん①
事前アンケートをもとに、Sさんに妊娠中から出産後までをお伺いしました。
Sさんの背景
初めての妊娠で、23週目の頃に突然出血、3週間管理入院されました。
まず、Kちゃんに病気があると分かった時の頃から伺いたいと思います。
Sさんは、23週の時に突然出血し、3週間管理入院され、この時に「十二指腸閉鎖」と心疾患「ファロー四徴症」だと分かったそうですね。
その時のお気持ちをお聞かせください。
初めて聞く病名に驚き、自分の子どもに病気があるということにとてもショックを受けました。
Kちゃんに病気があると分かった後、不安な中、病名など検索すると新たな不安も出てきたことだろうと想像します。その際の気持ちと、その後の気持ちの変化をお聞かせください。
初めはショックを受けましたが、先生から、ファロー四徴症は、心疾患の中でも予後が良く、同じ病気のお子さんも手術をして元気にすごせているというお話を聞き少し安心しました。
そして、お腹にいるKちゃんが、出産後に私や夫がショックを受けたり、先生方が慌てたりすることのないように、
『私は生まれてすぐ手術がいるよ。だから、早めに違う病院に、移っておいてね』って、教えてくれたように思えました。
今日も私のお腹の中で、一生懸命生きてくれている。私が笑顔で妊娠生活を送る方がお腹のKちゃんにとってもきっと良いだろうと思い、前向きに考えて生活するようにしました。
Sさん自身の不安な思いや悩みを相談できる人や、支えてくれる人はいましたか?
夫と両親です。
退院後は、両親や夫の勧めで、実家で過ごしました。
夫は、週末は私の実家で過ごし、平日は、実母が私の気持ちに寄り添ってくれていました。身体的にもゆっくり過ごせましたし、何よりも、精神的にもとても心強かったです。
ご家族や周りの方へ、病気のことを伝えましたか?また、同じ病気の方のSNSなどの情報を得たり、保健師さんや役所の福祉課など、頼ったりしましたか?
家族、そして特に仲の良い友人です。この時は、総排泄腔遺残症のことは分かっていなかったので、役所関係に相談するというようなアクションは起こしていません。
予定日より5週早い、34週5日の早朝に突然破水→救急搬送。陣痛を抑える点滴をしたが破水が止まらず、翌日自然分娩で出産されたとのことで、初めての出産かつ、急な展開で、Sさん自身動揺されたのではないでしょうか?この時のお気持ちをお聞かせください。
夫もいるときでしたので、そこは心強かったです。初産で何も分からないだけに、むしろ、まな板の鯉状態で、意外にも落ち着いていました。
分娩時間3時間後に、無事にKちゃんが産まれて、少しカンガルーケアをされたそうですね。Kちゃんを抱っこした時のお気持ちや、今後手術を必要とすることに対しての思いなど、いろいろ複雑だったかと思いますが、その時のSさんの想いはいかがでしたか?
カンガルーケアをしているときは、"産まれてきてくれてありがとう"という感謝の気持ちと、会陰切開部の縫合、悪露を出来るだけ出すためにお腹を押されて、とても痛い気持ちとが入り混じっていました。
その後、娘が、別室に連れて行かれるときも、まだ私は、総排泄腔のことは知らされてない時なので、"心臓のことがあるからすぐ検査されるんだな"とか、どの赤ちゃんも、病気が無いかとか調べるために別室に行って調べるのかな…そういうものなんだなぁと思っていました。
とにかく出産直後で、その後の手術のこと等は考えられない状態でした。
出産後、お尻に穴が開いていないことが分かったが、Sさん本人には知らされず、翌日ご夫婦揃って医師から詳しい説明を受けたそうですね。この時に初めて「総排泄腔遺残」であると聞いたことと思います。出産前に「十二指腸閉鎖」と「ファロー四徴症」の告知をされており、さらに今回は「総排泄腔遺残」であると聞き、驚きとショックがあったかと思いますが、この時のお気持ちをお聞かせいただけますか?
ショックでたまらなかったです。頭の中が真っ白になりました。まだ他にも病気があったなんて…と。
そして、先生方は、『幼少期は排便等について、少し訓練がいるかもしれないですね』…というような感じで、"難治性"という言葉や、"一生付き合っていかないといけない病気"だとは言わず、今思うと、かなり言葉を慎重に選んで話されてたと思います。
娘にばかり…どうして…まさか自分のこどもがそんないくつもの病気を抱えているなんて…と涙が溢れました。
妊娠生活においても、気をつけて過ごしてきたつもりだったので、何がいけなかったんだろう…と悩み、娘に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
娘は、事前に病院も移るように導いてくれて、三連休の初日で、夫がお休みの日に、自然分娩で、初産にも関わらず3時間で産まれてきてくれて、私に楽をさせて、その分、Kちゃんがしんどいことばかり背負ってしまっている。それが申し訳なくて、寝ても覚めても、"どうしよう。夢であってほしい、本当にごめんね"という気もちばかりでした。
出産後のママの多くは出産の疲労やホルモンバランスの変化、傷の痛みなどで気持ちが不安定になりやすいと言われています。 その上、大切な赤ちゃんの病気の告知や離れて過ごすことなど、思い描く産後の形ではなかったのではないでしょうか。そんな気持ちを吐き出す相手や場所がありましたか?
やはり、夫と実母です。
私は退院してから約3週間、実家で過ごしました。とにかく、母は私の気持ちにいつも寄り添ってくれていました。私が前向きな気持ちになれてる時は前向きな発言をし、私が泣いてる時は、話を静かに聞いて、一緒に泣いてくれました。
私は、毎日泣いていました。
けれど、産後3週間経ったとき、
"このまま毎日泣いていてはいけない。Kちゃんは、今この瞬間も病院で一生懸命生きている。母である私がこのままではいけない。Kちゃんのことを一番に考えて、前向きに明るく堂々と、そして愛情いっぱいに育てていかなきゃ"
と思えるようになりました。
母が寄り添ってくれたあの1ヶ月が無ければ、私は、産後うつとかになってたと思います。母には感謝してもしきれません。
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